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■ 五月病 ■
2014.11.29
 入学や就職などで新しい生活環境に入っても、5月のゴールデンウイーク明けころから抑うつ気分・無気力・意欲の喪失などをきたして、学校や職場に行けなくなる状態が起こることが多々みられます。これを「五月病」と呼ばれることもあります。
 A君も大学に合格するまでは一生懸命勉強してきましたが、大学に入ってもゴールデンウイーク過ぎから勉強が手につかなくなり、休学に至りました。どうしてこのようなことが生じるのでしょう?
 A君は小さいころから、親の期待の元に学校や塾の先生に言われるまま頑張って勉強してきた結果、大学に合格しました。受験するまでは言われるままに勉強してさえいれば問題はありませんでした。服装なども校則を守っていればよかったし、そのほかの行動も親や先生の指示通りにしていれば、叱られることなく無事にやり過ごしてこられました。周りの大人たちに行動が制限される不自由さは感じながらも、指示通り行動するのが当たり前と思うようになっていました。大学を受験したのも、A君には特に興味をもってやりたいことがあったわけではなく、ただ偏差値だけで志望校を決めたのです。大学に入ると、「勉強しなさい」という枷がなくなり、講義を受けなくても高校時代のように先生に叱られることはなく、講義を受けるかどうかは自分の問題だとその決定権を大人たちから手渡されたのです。しかし目的がないまま大学に入ったため、講義を受ける意味を見出すことができません。また就職しようにも、また就職試験には偏差値のような指標もなく職業選択もままなりません。何を目標に勉強していいのか分からず、下宿に籠もることになったのです。A君はいつのまにか自分で考えて行動することができなくなっていたのです。
 他人の指示で十分に納得のいかないまま行動する長い間の習慣が、自分でものを考えることを妨げます。それが大人たちの枷から解放された自由な環境の中でも、考えが定まらず苦しむ原因になったのです。このA君のケースは、常日頃から自分で納得して行動することの積み重ねが、充実した学生生活を送るのにいかに大事であるかをものがたっています。この問題の背景には、子供に指示する大人側と、指示を受けた子供側のそれぞれの心の営みに問題が潜んでいるのです。
(森 正博)
五月病
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