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空の巣症候群
2014.09.05
 子育てに専念してきた親から、子供が成長して親元を離れていくと、心にポッカリ穴が空いたような感じがするという訴えをよく聞きます。この心の状態は、ひな鳥が巣立った後、巣が空っぽになる様を例えたもので、一般に「空の巣症候群」と呼ばれることがあります。子育てを生きがいとして密接に関わってきた親が、子供が独立すると共にその生きがいを失い、寂しさ、むなしさ、憂うつな気分などが心を占領して、何もする気のない状態になるのです。
 この現象の裏には、親子間の心理的な癒着があります。親は子供の将来を心配するあまり、子供のためと思い込んで過保護、過干渉に子供と関わることとなります。その結果、子供の考えに入り込んだり子供の行動を決めたりするようになります。一方、子供も親の意見や指示がなければ自分の行動を決めることができなくなります。この状態が心理的な癒着なのです。このような癒着があると、親は知らず知らずのうちに子育てを生きがいと感じるようになります。そして子供が親元を離れると、親は自分の体の一部をもぎ取られるような感じがして、子育てへの生きがいを喪失するのです。その結果、上記のような寂しさ、むなしさ、憂うつな気分が心を占領することになります。
 親に子供への心理的な癒着があると、子供の世話をしたり子供の成長を見守る歓びである愛情と、生きがいに思い違いが生じて、このような空の巣症候群と呼ばれる心の苦しみをもたらす原因になるのです。
(森 正博)
空の巣症候群
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