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■ アドバイスに潜む感情 ■
2014.11.14
 昨今、「妻によるカジハラ」という言葉が出てきて話題となりました。「妻によるカジハラ」というのは、妻が夫のする家事について口を出すことで夫がハラスメント(嫌がらせ)を受けたと捉えてしまうというものです。妻はよりよく家事ができるようにという気持ちで、夫にアドバイスをするのですが、それを夫が「ハラスメント」と捉えてしまうのです。例えば、食器洗いをする夫に対して「こんな風にしたらもっと早く済むわよ」と妻がアドバイスしたとします。食器洗いが効率よくできるようにという思いでアドバイスをしたのですが、夫は「俺のやり方は要領が悪いってことか?!」「お前は文句ばかり言う!!」と怒りだしました。日常生活のなかでこうした場面に出くわすことはよくあることです。妻の夫への好意を夫は悪意と捉えたのです。
 この妻のアドバイスを夫が「文句」と捉える原因を探ってみると、アドバイスする妻の感情にその原因が潜んでいることが分かります。妻がにこやかに「こうすると早く済むわよ」というのと、イライラしながら不満げな顔で「こうすると早く済むわよ!」というのとでは、言われた方の受け取り方が変わります。前者の言い方では妻の知識がそのまま夫に伝わりますが、後者の言い方をすると夫は妻の言葉の裏にある不快な感情を感じとって非難されているように感じます。これが「カジハラ」の仕組みなのです。リラックスした快い感情は相手に情報を伝えますが、不安や不満などの不快な感情には相手の行動に介入する指示という作用があるのです。
 私たちは日常の会話で、その言葉のもつ意味とは異なる意味を聞きとることがあります。それには会話するときに交わされる感情が作用しているのです。人間関係での誤解や行き違いによるトラブルはよくあることです。円滑な対人関係にはリラックスして会話することが大きな要素となっているのです。

(カジハラ:旭化成ホームズのCMで取り上げられる。「カジハラ(家事ハラスメント)」 の語源は竹信三恵著『家事労働ハラスメント』(岩波新書)による )
(森 正博)
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