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○シルバー世代のストレス
2015.6.17
 最近の団塊世代の大量退職とともに、家庭での夫婦の在り方がストレスの面で問題になっています。妻からは「3食の食事を作るのは大変だわ」とか「買い物に行く時も夫が付いてくるのよ」などと、子供が独立した後の夫婦二人だけでの暮らしに戸惑う言葉をよく耳にします。平均寿命が延びて退職後に夫婦が一緒に暮らす期間が長くなってきている昨今、ぎくしゃくしてお互いにしんどい思いで日々を過ごすことはつらいものです。
 主婦のA子は、何ごともきちんとしないと気が済まない性格です。夫が会社員で現役の間は、家事・子育て・お金のやりくりなど全てを一人でやってきました。周りからも「よくそれだけやれるよね、すごいわ」と言われ「できる妻」と思われていました。子供たちが独立してからは、自分の趣味を広げ、文化講座やボランティア活動に参加し、彼女なりに充実した日々を送っていました。夫の退職後も、夫の健康を考えた献立を工夫し、家事も自分の趣味も今まで何でもきちんとしてきたという自負の元にこなしてきました。しかし歳と共に若いころのように家事も手早くこなせなくなり、またあれこれと広げた趣味も負担を感じるようになってきました。きちんとしなければと思えば思うほど若いときほどきちんとできない現実とのギャップに疲れを強く感じるのです。
 夫と二人で老後の生活を楽しもうと思っていたのですが、夫が一日中家にいることで気分的に圧迫感を感じるようになりました。自分の自由な時間を奪われた気がするのです。夫は何も言わなくても、「あいつ、手抜きしているな」とか「僕が仕事をしていたときにあんなことをして遊んでいたのか」などと思われないだろうかと、無意識のうちに夫の評価が気になるのです。しかも、周りから「主婦のお手本のような人」と思われている手前、家事の手抜きをすることも苦痛なのです。彼女は自分を追い詰めてしまい、「~しなければならない」「いい妻でいなくてはならない」という思いが募り心も身体も疲れて気持ちの晴れない日が続くようになりました。
 彼女の心の疲れの背景には、周りの人の評価があります。他人の評価でものを考え行動する習慣がこのような状況で葛藤を生じ心の疲れをもたらすのです。老後の悠々自適の生活には他人の評価で生きるのか自分の人生観で暮らすのかが大きく影響することをものがたっています。
(森 正博)
シルバー世代のストレス
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