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○ノーと言えない性格
2015.4.15
 これは37歳の男性の公務員が疲労困ぱいした状態を友達に語ったものです。
 仕事が山積みの状態で大変なことになっている。忙し過ぎて何をしているのか全然わからない。集中力がなく注意も途切れてしまう。担当の者が1年間保留にしていた書類が出てくると、それも自分が処理しないといけない。1年目で業務のわからない職員も多いが、彼らに対するサポートはない。「あいつが出勤したらするだろう」という感じで、皆放ったらかしにする。やってもらっても間違いが多くて自分が訂正することになる。結局、何もかも自分がしないといけない羽目になる。自分に全てのしわ寄せがくる。朝から昼まで現場で働き、職場に帰ってからも夜中まで書類をつくる。自分の仕事の状況を理解しない上司は「仕事が遅いではないか。もっと早くから用意しとけ」と指示するだけである。時間外は上限が決まっている。時間がなくてもそれ以上に残業すれば「勝手に残業している」とみなされるので、必然的にサービス残業となる。帰宅は午前2時になっても朝7時に家を出て職場に向かう。毎日これの繰り返しだ。午前4時から6時の睡眠になることもまれではない。特に金曜日の夜は午前2時に帰宅してから午前5時まで仕事をするときもある。職場でも家に帰ってからでも仕事ばかりだ。時間がない。日も足りない。疲れる。毎日ヘトヘトでもう限界だ。
 この男性は、几帳面でものごとを完璧にしないと気が済まず、細かいことに気がつき、とことんがんばる責任感の強い、そして人に頼まれると断わることができない性格をしています。このような性格の人物を日本では律義者として重宝されますが、ストレスで健康を損ないやすい傾向があります。頼まれると断われない心を分析してみると、断ることで「役に立たない」「期待はずれ」「頼りにならない」「冷たい」などと思われることに対する不安が背景に隠れていることがわかります。この不安が原因で頼まれたことを断れずいつの間にか自分の能力を超えた仕事を抱えることになるのです。その結果、疲労がつのり健康を損なってしまいます。一生懸命仕事をしようという思いが病気を誘発し仕事ができない状態になるのです。健康な状態を維持して仕事を継続するためには、自分の能力を越えた仕事を断ることに対する不安をいかに取りのぞいていくかが課題となるのです。
(森 正博)
ノーと言えない性格
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